ヘルニア・脊柱管狭窄症
ヘルニア・脊柱管狭窄症
椎間板は人間の背骨にあり、骨と骨のあいだでクッションの役割をしています。背骨は頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)に分けられ、その骨と骨の間の全てに椎間板が存在します。
椎間板に負担がかかり、椎間板内部にある髄核という組織が外に飛び出して神経にぶつかった状態が椎間板ヘルニアです。神経がダメージを受けると腰や下肢の痛みや力が入らないといった神経症状が出現します。
原因は一つではありません。今までに報告されているものとして、20~40歳代の男性、重労働者、車の運転、喫煙などが腰椎椎間板ヘルニアになりやすい原因と指摘されています。複数の要因が合わさって発症することが多いです。
代表的な症状は坐骨神経痛といわれる、お尻から太もも、足首にかけて痛みと痺れです。何番目の腰椎に椎間板ヘルニアが発生しているかで、痛みがでる場所も変わってきますが、頻度が一番多いのはお尻や太ももの裏の痛みです。その他にも足に力が入りにくさ、陰部や肛門の痺れや尿や便の出しにくさの症状がでる人もいます。
経過、症状、身体診察とレントゲンやMRI検査などで診断をします。椎間板ヘルニアの診断にはMRI検査が必須となりますが、MRIでは見えにくい小さいヘルニアでも強い痛みを引き起こすことがあるため、MRIでも診断が難しい場合は造影剤を使った検査や、診断の目的でブロック注射などを行う場合もあります。
椎間板ヘルニアは、痛みが強く生活に影響を与えることがありますが、50~80%は手術をしなくても痛みは改善するとする報告があります。ヘルニアの種類にもよりますが基本的には数カ月で自然に吸収され消失することが多いと報告されています。
椎間板ヘルニアの治療は、手術が第一選択ではありません。患部の安静や内服薬、ブロック注射などの保存治療と言われている方法で痛みがなくなることも十分に期待できます。
しかし、足に力が入らなくなってしまった場合や、尿や便が出ない場合は早急に手術を行わないと、永続的に症状が残存してしまうことがありますのですぐに病院を受診してください。
椎間板ヘルニアでは、椎間板や脱出した髄核が神経に当たってしまい、神経に炎症が起こっていることが痛みの原因です。根本的に神経に当たっている髄核を摘出するには手術以外はありませんが、神経の炎症を抑えて痛みを軽快させる方法として抗炎症薬やステロイドの内服や注射といった方法があります。
リハビリや内服薬、ブロック注射などをまず行い、それでも痛みが軽快しない場合には手術を検討します。
痛みが非常に強い場合や、数カ月間の保存治療を行っても痛みが改善しない場合には手術を選択します。手術の一番のメリットは、痛みを引き起こしている原因を直接取り除くことができる為、痛みを早くとることができます。しかし、当然一定の確率で合併症が起こるリスクもあるため、医師と相談して方針を決めることになります。
手術方法は基本的に背中側からヘルニアを取る手術を行います。手術方法は顕微鏡、拡大鏡、内視鏡を使った手術など様々ですが、何度も繰り返す場合は金属を挿入して背骨を固定する手術が必要となることもあります。
内視鏡手術は近年、医療機器の発達に伴い手術件数が増加している手術方法です。脊椎内視鏡手術にはいくつか方法がありますが、現在国内で最も多く行われているのはMED(内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)を行っています。直径16mmの金属製の筒を使い手術を行うため、傷口はわずか18mm程です。全身麻酔で行い、手術時間は1時間程、術後は翌日から歩行開始し5日前後で退院可能です。
椎間板ヘルニアは痛みが強くでることもあり、比較的若い方に多いので、仕事や生活に支障がでて困ることが多いです。薬や注射で痛みを抑えていくこともできますが、痛みから早く解放されたければ手術も選択肢のひとつとして検討してもよいと思います。椎間板ヘルニアの内視鏡手術は身体への負担は少ないので、病気について不安のある方はお気軽に受診してください。
脊柱管とは、背骨にある神経の通り道のことです。脊柱管は骨(脊椎)のトンネルのような構造をしており、その中を神経(脊髄)が通っています。脊柱管狭窄症では、年齢や構造的な変化などで、脊柱管が狭くなり、その中を通過している神経が圧迫されることで、痛みや痺れなどの症状が出現します。
具体的に神経を圧迫する組織としては、変形した骨や椎間板、肥厚した靭帯(黄色靭帯)であることが多いです。これらの組織によって神経がつぶされ、神経への血流が乏しくなり、炎症が引き起こされることで症状が出現します。
腰部脊柱管狭窄症の原因は一つではありません。一般的には腰を使う作業の繰り返しや肥満などで腰椎に負担がかかり、黄色靭帯が肥厚し神経が圧迫されることが原因として考えられています。
この他にも骨粗鬆症による圧迫骨折や側弯症などで骨が変形することで、骨や椎間板により神経が圧迫される場合もあります。この他にも喫煙や糖尿病、ストレスの関与も報告されています。
腰部脊柱管狭窄症では、安静にしていると神経への血流は保たれるため無症状ですが、数分間歩行や運動をすると神経へ血流が不十分になり、痛みなどの症状が出現するのが特徴です。
代表的な症状は坐骨神経痛や間欠性跛行という症状です。坐骨神経痛は腰やお尻から太ももの裏、足首にかけて痛みと痺れのことを言います。間欠性跛行は60~80%の患者さんに出現する症状です。間欠性跛行とは、一定の時間歩いていると痛みが出てきて歩けなくなりますが、数分間休んでいると痛みが落ち着いてきて再度歩行できる、という状態を繰り返すことです。この他にも足の重だるさや足の裏の違和感などを感じる方もいます。
経過、症状、身体診察とレントゲンやMRI検査などで診断をします。基本的に診断にはMRI検査が必須となりますが、狭窄の強さと症状の強さは一致しないこともあります。MRIでも診断が難しい場合は造影剤を使った検査や、診断の目的でブロック注射などを行う場合もあります。
脊柱管狭窄症は、神経が圧迫されて症状が出現していますので、根本的に原因を取り除く方法としては手術以外にはありません。しかし、神経が圧迫されている状態は変わらなくても痛みが自然に落ち着いてくることもあります。また、手術以外の治療法としては内服薬やリハビリ、神経ブロック注射などの治療法があり、これらを組み合わせることで症状をコントロールできることもあります。
保存治療で4割ほどの患者さんで症状が改善すると報告されています。基本的にはいきなり手術をするのではなく、まずは手術以外の治療法(保存治療)を行って症状が軽快することを目指し、それでも症状が改善しない場合に手術を検討します。
手術には除圧術と固定術の2つの方法があります。除圧術は神経を圧迫している骨や靭帯を削り神経の圧迫を解除する方法です。固定術は背骨にネジを入れて背骨を動かなくすることで神経の圧迫が起こらないようにする方法です(固定術は除圧術後と併用することが多いです)。
除圧術のほうが体への負担が少なく合併症の頻度も低いですが、病態によっては固定術が必要な方もいますので、十分に検査をしたうえで手術方法を決定します。皮膚を切る場所としては、背中の切って後方から脊椎に到達することが多いですが、病態によってはお腹や脇腹など前方や側方から脊椎に到達する方法を選択する場合もあります。
内視鏡手術は近年、医療機器の発達に伴い増加している手術方法です。現時点でもいくつかの内視鏡手術の方法がありますが、現在国内で最も多く行われている脊椎内視鏡手術はMEL(内視鏡下椎弓切除術)を行っています。
直径16mmの金属製の筒を使い手術を行うため傷口は18mm程で、手術翌日から歩行開始することができます。すべての症例を内視鏡で対応することは難しいですが、再手術例や骨折などでなければ、内視鏡手術で対応できることが多いです。
脊柱管狭窄症をはじめ脊椎の手術について、漠然と不安を抱えている方が多いと思います。当院では、正確に細かく診断を付けることで、本当に症状を引き起こしている病変に対してピンポイントで治療を行い、身体への負担が小さい治療を提供できるよう努めています。病気について不安のある方はお気軽に受診してください。
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